■HP Android Slateシリーズ インプレッション
fansfans経由で日本ヒューレット・パッカード株式会社主催の個人向けAndroid新製品の発表会に参加させていただいたので、新製品について簡単なインプレッションを書いておきたいと思います。fansfansではこういう新製品に触れられる機会を設けてくれるので感謝しています。しかしながら、今回はやや厳しめのことを書かざるを得ないと思っていますので、HPファンの方は読まれない方がよいかと思います。ということで…早速。
■HP Slate 7
今回最も低価格で発売される7インチのWiFi対応Androidタブレット。HPダイレクトの予定価格は13680円とのこと。普及している7インチタブレット市場に低価格で参入するということで、画面解像度が1024×600に抑えられている他、CPUもTegra等のメジャー級ではなくいわゆる中華Padと同等の中身と言っていい内容。MicroSD(最大32G)が利用できるのは嬉しいところ。中華Padと異なる部分と言えば、外装がソフトタッチの塗装になっておりグリップ感があり持ちやすいとされるところと、オーディオにbeats audioを採用していることくらい。Androidバージョンも4.1ということで、正直な感想を言えば、HPとしてとりあえずラインナップに7インチはありますよと体裁は揃えてみましたという印象。低価格なのにbeats audioをわざわざ採用して差別化していますよと言っているにも関わらず、付属品にbeats audioのイヤホン・ヘッドホンはなく、別途購入しなければならない(並行輸入の一部を除いて市場ではそれだけで1万以上する)など戦略的にどうかと思うちぐはぐさ。HTCのbeats audio付属スマートフォンを持っているユーザ向けですかと皮肉のひとつも言いたくなる印象です…。もちろん中華Padと違い大手のHPだけに低価格なりにユーザ向けのサポートには期待できるところがあるかと思いますが、その辺りについてはなんら説明はなく実際に想定するユーザと必要な機能のバランスが非常に悪いと感じました。実際製品を試せる体験時間でもSlate 7のコーナーは人が少なく興味があまり持たれていないように思いました。せめてキャンペーン等を行って、並行輸入で4000円程度のbeats audio対応イヤホンを販売するなどしてほしいところです。
■HP SlateBook 10 x2
今回発表された中では個人的に最も興味を惹かれた製品です。Android 4.2を搭載しタブレットとキーボードを分離合体して利用できるHybridタイプの端末で、デザインもHPらしいシンプルなものになっています。CPUにはTegra4 1.8GHzを採用。メモリもDDR3L 2Gを搭載しています。内蔵メモリ(eMMC)は16Gと64Gが選択可能。タブレットとキーボードを合わせたバッテリー駆動時間は約15時間(重量は1.25kg)ということで十分な性能を持っていると感じます。競合製品としてはASUSが何種類か出していますが、実際過去使い勝手も良かったので(関連記事はこちら)最新かつHPデザインの端末ということで、これはかなり期待しています。
OSがAndroid 4.2.2(カーネルバージョン 3.4.35+ H.M@Android-Build-System #1 Sun Jun 9 00:07:10 CST 2013, ビルド番号 4.2.2-17r14-09017) 、標準でMiracast・HPePrint対応ということで使い勝手は良さそうです。プリインストールアプリもあまり余計なものは入っておらず安心です。残念なのはネットワークがWiFiのみ対応で3G/LTEの対応予定がないこと、キーボード側のSDカード対応が32GまででSDXCに対応しないことでしょうか。IPSフルHD液晶の発色も良くタッチパネルの感度も非常にいいと思いました。キーボードのキーはアイソレーションタイプとしては平均的なもので良くも悪くもない印象。タッチパッドの反応も普通かなという感じです。展示は英語キーボードのものでしたが、国内では日本語キーボードのもののみが発売されるとのことでした。こうした製品として売る以上キーボード品質は結構大切だと思うので日本語キーボードには期待したいところです。個人的にはあまり使いませんが、HDMI出力とUSB2.0端子がキーボードにあるのも使い勝手としては嬉しいですね。
直接的な競合は製品はASUSのTF700Tシリーズになると思いますが、今回のSlateBook 10 x2は16Gで5万円くらい、64Gでも6万円台で購入できるとのことなので、CPUや価格性能比ではかなりいい勝負になるように思います。実際に商品が発売されたらキーボードと日本語入力対応状況(後述)を確認して持ち出し用に購入を検討したいところです。
■HP slate 21
こちらは据え置き型の大画面Android端末です。フルHD21インチIPS液晶の大きな画面でAndroidがさくさくタッチ操作することが可能です。正直なところ需要あるのかな?とやや懐疑的だったのですが、昨今はPCを持たずスマホでなんでも対応してしまう世代が増えてきているということなので、Androidスマホとアプリが共有利用できる端末ということでは、今後需要が増えてくる端末なのかもしれないと思いました。残念ながら付属フルキーボードとマウスは有線接続で、本体も5kgでバッテリ無しと家の中でもあちこち持ち運んで使うというような用途は想定されていない据置端末のようですが、CPUにはTegra4(最大1.8GHz)、Andoroid4.2搭載と最新のものが採用されておりマルチユーザ端末として十分な性能が見込まれる内容になっています。ただし、内蔵メモリが8G、SDカードも16Gまでしか対応しないなど容量的には不足感が否めません。質問したところ、EthernetやUSB端子があるからそちらを活用して欲しいということでした。外付けHDDやNASをということなのでしょうが、最初から家庭内でマルチユーザを意識して作られた端末という想定なのにそれでいいのか?とは思いました。4万円程度で発売とのことだったので価格設定の問題はあるのでしょうが、少々残念に感じます。もっともフルHDで使うIPS液晶のサブ端末としてはかなり安価で利用できそうなので、個人向けよりは企業などの情報表示端末等で活躍しそうな気もします。
■HPの本気は…?
個人向け新製品発表ということで期待していったのですが、内容的には正直残念感の方が多かったと言わざるを得ません。3種類全て既に競合他社が先行している製品の後追いでしかなく、HPとしての新しさは全く皆無と言っていいものでした。もちろんHP ePrintなど自社製品によるシナジー効果などを見込んではいるのでしょうし、HPの品質管理により安定した製品供給は期待できるかもしれませんが、ユーザにとって本当に何が必要か考えてHPが造り上げた製品ではなく、OEM供給可能なものでHP的化粧をして揃えて見ましたという印象がぬぐえません。キーボード付き製品に最も重要な要素である日本語入力プログラムは9月発売予定なのにこの発表時にまだ未定、OSのアップデートはお客様の意見を伺いながらこれから検討など、本気でAndroidに取り組む気があるのか疑わしいとしか感じられない質疑応答の内容には失望を隠せませんでした。
ただHPがAndroid製品を国内で個人向け販売するメリットはもちろんあると思っています。PC市場が低価格帯に移行しつつあり、タブレットに市場を席巻されている状況で、HPというブランドがそこに存在しないというのは将来的にやはり致命傷になると思います。まずは製品をリリースして選択肢のひとつとしてHPブランドが検討されること。そしてCM等で認知されることはHPがこの先もコンシューマ市場で生き残るために必要な戦略であると判断したのだろうと推測します。そしてHPがAndroid製品をCMすることはAndroid製品のPC的利用法の認知向上にもつながっていくでしょうし、ここには期待したいなぁと思っています。
ぜひHPには次期製品で独自性を発揮してもらいたいと思います。昨今高性能なデジカメがブームなので、高性能なビューワーとしてSDXCのSDカードに対応したsRGBフル表示のIPS高解像度液晶搭載の8〜10インチタブレットとかどうですかね?ハイエンドミラーレスからデジタル一眼ユーザ向けにすごく訴求できる製品になると思うんですがw(個人的にすごく欲しいです)