■ESET Cybersecurity for Mac 日本語版レビュー
 fansfansの「ESET Cybersecurity for Mac 日本語版」プレビューイベントに参加することができたので、簡単になりますがレビューを書いておこうと思います。パフォーマンスの適切な計測をしてから記事にしようと思ったのですがまだできておらず、来週一週間不在にしてしまうため期間が開きすぎるのもアレかなと思ったので、感想が中心になりますがレビューしておきます。今回はESETのMac用アンチウイルス&アンチスパム製品「ESET Cybersecurity for Mac」のみをターゲットにしたものでしたが、会社や製品概要紹介の時間が長く実際にイベント内で使用して質問などする時間がやや少なくなってしまったのがちょっと残念でした。

 System6.0.3からMacを使っている身としては、Macの方が昔はMDEVとかウイルス感染すること多かったんだけどなーとかアンチウイルスソフトも必須で種類も結構あったんだよねーとか思ってしまうわけですが、OSのシェアと攻撃のしやすさからWindows向けウイルスの方が圧倒的に増えてしまったため、相対的にMacの方がウイルス感染リスクが少なくなってOS自体がセキュアであるかのような誤解が広まっていたところ、MacOSXでシェア回復と共に再度ウイルス感染リスクが高くなって再度こうしてたくさんのアンチウイルスソフトの選択肢が提供されてくることは喜んでいいやら悪いやら、なんとも不思議な気分です。

■ESET Cybersecurity for Mac

 ESETはアンチウイルスソフトNOD32という製品で有名なスロヴァキアの会社で、社名は女神イシス(古代エジプト名アセト)の名前に由来するのだそうです。神話に詳しいわけではありませんが、良妻賢母の象徴・豊饒の女神でかつ強力な魔術師ということなのでなかなか意味深い感じがします。国内ではNOD32を中心にパーソナルファイアウォールやアンチスパムを機能統合したESET Smart SecurityとしてキヤノンITソリューションズ社がWindows用製品を開発、EC studio社が販売を行うという体制を取ってきました。ESET製品は軽快な動作が非常に特徴的で、WindowsXPをメインで使っていた頃Avast!4からESET Smart Securityに切り替えた際に劇的に通常操作の体感速度が向上して感動したことを覚えています。

 今回のMac版ではWindows版と異なりアンチウイルスとアンチスパムの二機能のみの搭載となっています。レビュー用に提供されたバージョンは4.0.69.0になります。7月中にリリースされる予定のモニター版(レポートに協力すると抽選で50人に1年ライセンスをくれるらしい)は既に完成しているものの、今回はそのひとつ前のバージョンとのこと。このバージョンでも10.7には対応済みということでした。正式な製品版は秋頃になるそうです。プレビュー版ということで、EC studio社の担当さんからインストーラ入りUSBメモリをお借りして持ち込んだMacにインストールします。

 インストールはマウントされたインストーラをダブルクリックするだけで見慣れたMacアプリのインストーラ画面が表示されます。ライセンスの同意の後、いくつかインストーラ上で設定を選択しますが基本デフォルトでOK。インストール自体も難なく終わり再起動を要求されます。再起動するとログイン後にESETのスプラッシュ画面が開き、メニューバーにESETアイコンが表示されるようになります。この後ESETのアイコンからアクティベーションを行います。Windows製品では再起動時や起動直後からすぐにスキャンが始まるものもありますが、ESETではそうした動作は行われていないようで(ディスクアクセスの状況から判断しただけで仕様を確認したわけではありません)、明示的にローカルディスクの検査を一度行う必要があるように見えました。ESETではThreatSenseエンジンというヒューリスティック検出の技術を利用するため、所謂定義ファイルのみ依存型と異なり軽快に動作するのだということでした。ThreatSenseエンジンの標準設定では、SMART Optimizeという機能が有効になっており、ファイルのmtimeやctimeなどを参考にファイルの更新検知をして、一度チェックしたファイルはファイル自身かESETの定義ファイルの更新がない限り再チェックしないことで動作効率を上げているのだそうです。

 メモリ2G /Core2Duo 2GHzのMacBook白で、ローカルディスクの検査を行いながらSafariでEICARのテストウイルスをダウンロードするという実験を行ってみましたが、ダウンロード完了直後に画面右上にフロートウインドウが表示され、隔離された旨が通知されました。レスポンスは極めて良好だと思われます。ローカルディスク検査中のパフォーマンスをtopコマンドで確認してみると、CPU使用率は25%〜30%前後、esets_guiとesets_daemonが合わせて50%程度のCPUを使っているようでした。メモリもあまり消費しておらず非常に安定した印象です。他のアプリケーションを動かしても動作が遅くなったような印象はほとんど受けません。今回はイベントに合わせてクリーンインストールしたOSに試験データを入れて持ち込んでいたので、長期間稼働した場合のレスポンスの変化は気になるところです。

 他のMac用アンチウイルス製品との比較では、ウイルスバスターやSophosと比較してGUIの設定画面がよりわかりやすい印象がありました。また通知内容がわかりやすく、検出されたファイルのパスが確認しやすいため、ここは特に好印象でした。ただ検出通知された数と隔離されたファイルの一覧の数がリスト作成タイミングによっては合わない場合があるようで、ちょっと気になりました。動作速度面ではウイルスバスターは論外(3年ライセンスを3本持っていますがレスポンスが悪く数々の不具合が発生したため現在は使っていません)として、軽量でとても静か(余計な通知が一切ない)なSophosと比較しても遜色ありません。(できればSophosとの比較を数値的に出してみたかったのですがこれはまた別の機会に。EC studio社によると倍くらい速いとか。)

 プレビュー版のためローカライズの点で変な説明があったり内容が合ってなかったり誤訳があったりと、まだまだな部分は散見されましたがその場ですぐに対応を検討してもらえるなど、キヤノンITソリューションズ社とEC studio社の柔軟さは素晴らしいと思いました。実際のところ海外でのMac版リリースから約1年遅れての今回の日本語版リリースなため、なぜこれほど遅れてしまったのかと質問をしてみたのですが、開発担当のキヤノンITソリューションズさんからとても正直に(1)Mac開発のノウハウがなかったこと(2)マルチバイト対応を含む不具合が多く国内要求品質レベルまで高めるのに時間を要したこと、という回答をいただきました。製品の販促イベントでこうした事情を正直に話すことはとても勇気のいることだと思うので、ちょっと感心してしまいました。

 ライセンスも柔軟な設定が検討されており、価格こそ発表されなかったもののBootCamp下では1台のマシンで稼働するMacOSX版とWindows版は1つのライセンスキーでOKとのこと(VMwareとかVM環境用は個別購入が必要)。海外の価格と大きく異なることはないだろうということなので、年間2500円くらいになるのではないかと想像します。

■まとめ
 個人的にはESET Cybersecurity for Mac自体は優れた製品で、有用な選択肢のひとつになると感じています。ただしSophos Home Editionや Intego VirusBarrier Expressなど無料でそれなりに使える選択肢がある状況での個人向けアンチウイルスソフトとしての差別化はまだ十分ではないように思います。より具体的な数値でのパフォーマンス比較や、安定性信頼性の情報提供(イベントではPassMarkAV-comparatives.org などの比較結果を紹介していました)を継続的に行っていく必要があると思います。それでもアンチウイルスソフトに敢えてお金をかけたいと思わせるのはなかなか難しいことのように思います…。しかしながら企業導入されているMac向けという観点であれば、かなり有望ではないかと思います。今回のイベントでは確認できませんでしたが、企業向けのESET製品マネージメントツールでESET Cybersecurity for Macが制御可能なのであれば、Macの企業導入が進む中むしろパフォーマンスと信頼性を前面に出して積極的に販促すべきだと感じました。そのためのサポート等関係バックヤードの構築も必要にはなりますが、個人向けよりは訴求できそうな気がします。

 今回イベントに参加してESETに関わる方々の熱意を感じられたので非常に良かったと思いました。特にEC stadio社の方は熱さを感じられました。きっと良い製品に仕上げていってくれると思います。現状はキヤノンITソリューションズ社が開発担当ということでしたが、ローカライズ作業自体は本家スロヴァキアで行っているとのこと。国内の要望にタイムリーに応えていくためにも、ローカライズはできる限り国内で可能な契約を検討して欲しいというお願いを勝手ながらさせていただきました。これまでいくつもの良質なMacアプリがローカライズ対応で苦労してきた(海外の開発者はなかなかマルチバイト圏を理解してくれない…)経緯を見てきたため、より高い信頼を得られるようぜひとも国内での対応力強化を期待したいと思っています。

 近くモニター版のリリース情報が提供されると思いますので、MacOSXをご利用の方はぜひ試してみていただければと思います。

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とりあえず付けておく無駄ではなかったなまぁまぁ読めたちょっと役に立ったかなかなり良かったかも (1 投票, 平均値/最大値: 5.00 / 5)
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