■docomo Galaxy Nexus SC-04D ラウンジ版レビュー
Galaxy Nexusのレビューは実機が来てからと思っていたのですが、発売日が少し先になってしまったのでラウンジ版をレビューしておこうと思います。スマートフォンラウンジでは入口寄りに3台展示されており、さすがに注目を集めていて常に誰かしら順番待ちをしているというような具合でした。しかしながら、少し前にtweetしたのですが、個人的にはこの端末についてはあまり国内での販売が伸びないのではないかと思っています。コンシューマにとってハードウェア面でスペック的に訴求できる部分が少ない上に、最大のセールポイントであるAndroid4.0(ICS)も魅力的な部分はもちろんあるものの、使いやすい携帯電話を求める多くのユーザにはICSのUI自体が魅力的には映らないだろうと感じてしまったからです。そうした部分を中心にここではレビューを書いていこうと思います。
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■ハードウェア
Galaxy Nexusの第一印象は「画面大きくて本体でかい印象の割に薄くて軽いかな?」というやや中途半端な感覚でした。スクリーンは4.7インチ1280×720の有機EL(HD Super AMOLED)でPentail配列のものになっています。高解像度ではあるものの画素を少なくしたPentail配列ということで少し表示の精細感について心配していましたが、実機を見てその不安はなくなりました。輝度も高く発色も良く精細感がありにじみ等をほとんど感じさせない美しいディスプレイになっていると思います。Optimus LTEに比べればやや粗いということもできると思いますが、通常の利用でその差が気になるようなことはあまりないと思いました。スクリーン表面はややカーブした形状ということですが、正面から見て使う限り湾曲を意識するようなこともありません。タッチの反応も非常に良く、高速なCPU OMAP4460と相まって非常にスムーズな動作が実現されていると感じました。皮脂も他機に比べて目立ちにくい加工がしてあるように感じました。スクリーンが大きいので片手親指での操作で対応できる範囲が非常に限定的で、横方向にはあまり支障がないものの、画面縦方向の操作は指が届かず、操作するため持ち位置を直したりしないといけない場面がかなりありました。カーブしたスクリーンが少しは移動距離を補ってくれるのかと思ったのですがそういう感じはありません。後述しますがOSの問題と合わせて、この操作具合がGalaxy Nexusで結構致命的な問題になるのではないかと心配してしまいます。
ICS前提の設計になったことで、スクリーン下部には見慣れたタッチ式物理式ボタン類はありません。Android3.x同様、戻る・ホーム・タスクボタンはスクリーン内のアクションバーに表示されるようになります。物理的なボタン類は最小となり、本体左側面にボリュームキー、右側面に電源キー、本体下部に左からヘッドホンジャック・マイク穴・MicroUSBととてもシンプルになっています。右側面にはクレードル用の充電端子もありますが小さくあまり目立ちません。電源とボリュームは薄い印象でクリック感もほどほどですが、安っぽい感じはありません。背面上部中央にはカメラとLEDフラッシュがあります。背面の広い範囲を凹凸のある樹脂カバーで覆っているのですが、これが個人的には持ちやすく好感触でした。ただあまり携帯電話にはないタイプの加工なので人によって好みが分かれそうな気がします。本体の重量バランスも悪くなく、滑りにくい背面カバーと合わせて非常に持ちやすいと感じました。
カメラは500万画素と今どきのスマホとしては画素が少ない感じですが、レスポンスは非常によくシャッターラグをほとんど感じさせません。ほとんど押した瞬間に撮影が終わっている感覚です。Xperia Arcのカメラ速度も当時感動したことを覚えていますが、これはそれ以上の快速動作です。写真のクオリティは画面で見る限りとなりますが、ブレも少なくキレイに撮影できているように感じました。フロント120万画素のカメラもノイズが少なく非常にキレイな表示が得られます。残念なのはカメラの撮影オプションが非常にシンプルすぎて物足りない感じがすることです。撮影モードはオート含めて5つ、露出補正も±3、パノラマ撮影が可能になっている等のプラス要素もあるものの最近の機種に比べて見劣りする感は否めません。Galaxy NexusがICSのリファレンス機であることは周知なわけですから、ICSではカメラは重視していないとハッキリ出てしまっているようで残念に感じます。
ワンセグやおさいふ・赤外線等の日本独自の機能は当然のように搭載されていません。Felicaの代わりにNFCが搭載されていますが、NFC搭載機間でデータ交換可能なAndroidビーム以外では国内で今のところ利用する術はなさそうです。
起動時間は以下のような感じです。起動はまずまず速いと思いました。
電源長押し→5秒→Googleロゴ→10秒→読込み動画→15秒→ロック画面(合計約30秒)
■ソフトウェア
前述の通りICSということで、Androidバージョンは4.0.1です。カーネルバージョン 3.0.1-gc1a8b31 android-build@apa28 #1、ベースバンドバージョン SC04D0MKK2、ビルド番号 yakjusc-userdebug 4.0.1 ITL33D SC-04D.KK2 test-keysとなっており、Samsung系らしい番号が振られていることがわかります。標準の日本語入力はiWnn IME Ver.2.2.0.jp-Google-03 オムロンソフトウェア(株)となっていました。スクリーンが大きくなっている分、入力はしやすいように感じます。プリインストールアプリはdocomoから発売される端末としては非常に少なくOS標準のものを含めて32個しか入っていません。Optimus LTEの半分以下です。明らかにdocomoの追加アプリと思われるのはspモードメール・あんしんスキャン・エリアメールの3つだけです。リリース時にどうなるかは判りませんが、このままの数でリリースされるなら画期的と言えるかもしれません。
プリインストールアプリとしてGoogle+があったりカレンダーのデザインがそこそこ良くなっていたり、メールやブラウザもデザインや使い勝手がやや違っていたりする部分はあるのですが、個人的に一番インパクトがあったのは、Android2.x系でメニューボタンに相当する機能が非常に判りにくく使いにくくなったことでした。ICSでは通常アプリがフロントで動作している場合には、アクションバーには戻る・ホーム・タスク一覧の3つのボタンしか表示されていません。これまでのメニューに相当する機能は縦に3つの■が並んだアイコンでアプリ内のどこかに配置されます。この配置に一定のルールがないようで、アプリによってこのアイコンの配置がバラバラになっています。画面の下の方にある場合には片手操作にあまり支障がないのですが、画面上部に配置されると持ち方を変えないと片手では操作できません。左手親指をメインで片手操作したい場合、画面右上にメニューアイコンがあると本体を持ち直さないと親指が届かないという具合です。慣れればなんとかならない訳ではありませんが、ICSの標準アプリでもこうした配置が不規則になっており、非常に使いにくいと感じてしまいました。例え両手持ち操作前提であってもUIの統一による分かりやすさは大切だと思うのですが、ICSの個々のアプリのUIのバラバラさ加減にはGoogleがユーザビリティを軽視している姿勢しか感じられませんでした。Androidに慣れているから感じる変更されたことへの不満ではなく、UI要素の位置やカラーがバラバラに使われていることへの不満であることは、少し注意して一度利用してみるとすぐに理解できると思われます。正直なところ初めてスマホとしてICSを使う人はこれを理解して快適に操作できるのだろうかと心配になりました。
設定関連でも、これまでの項目がフラットに並んでいたところにカテゴリ単位にまとめるようなUIが広く導入されているのですが、小さいフォントでカテゴリを表記しラインの太さを変えることでカテゴリ化を表すようになっていて、これが非常に中途半端で項目説明のフォントとサイズが同じで返って分かりにくくなっているところも散見されました。フォントフェースを変更したり色を変えるなどもう少し工夫のしどころはあるだろうに、そうした努力がされていないように見えます。「その他…」という意味不明の階層化がされた項目がそこだけ存在したり、Googleが何をしたいのか、どうユーザに理解して使って欲しいのか、ICSのUIの設計は全体を通して非常に不透明な感じがします。表面的なデザインやセオリーによってのみ再構成され、特にUIにおいては本質的な設計思想を欠いたアップデートになってしまったのではないかと残念に感じました。
先に酷いと思った部分を書いてしまいましたが、良い部分ももちろんあります。開発者向けオプションの設定項目はリリース時に残るかわかりませんが、CPUの動作状況をリアルタイムに画面に表示できるなど便利な機能がたくさん用意されています。Wi-Fi Direct設定や端末の暗号化設定の際などに表示される注意書きは力が入っているようで非常にわかりやすく説明がされており好印象でした。VPNの接続オプションが6種類選べるなど細かくなっておりこれも嬉しいポイントです(OpenVPNが選べたらもっと良かった…)。データ使用という項目では、一定期間の通信量とそれをどのアプリが行ったのかが一目でわかる工夫がされていて素晴らしいと思いました。またアプリを個別に選択してバックグラウンドでの通信を制限する設定が可能になるなど、ユーザの安心感に直接繋がる機能が追加されており非常に嬉しいところです。
動画再生に強いArchos 80 G9(OMAP4430)よりも上位のCPU OMAP4460を搭載しているということで、動画の再生試験も試してみたかったのですが、スマホラウンジでは試すことができない(そもそもMicroSDにも対応していないですしね)ので、音楽再生のヘッドホン出力確認だけしてきました。動画の再生試験は実機到着後に改めて記事にしたいと思います。ヘッドフォンジャックにいつものVictorのHA-FXC71-Bをつないで、Webブラウザで試聴用mp3を再生したところHA-FXC71-Bとかなり相性がいいようで、低音はしっかりキレと迫力ある鳴り方、ボーカルや高音も伸びやかでクリアな音で聴くことができました。最近はHTC Radarをずっと音楽プレイヤーとして使ってきたのですが、個人的にはそれを超える好印象な再生品質でした。派手さを抑えた堅実でしっかりした再生をするHTC端末に対して、Galaxy Nexusは少し空間を拡げて明るくした感じの音になっていてかなり好みでした。イコライザーなどの音質調整機能はなく標準でこの出力ということなので、おそらく実機が届いたらHTC Radarに変わってGalaxy Nexusが通勤時のメイン音楽プレイヤーになりそうです。(少し気になったのはラウンジの端末では充電用のUSBケーブルをつないだ状態だとヘッドホンジャックからの音声出力にノイズがのったことです。展示されていたのは開発機ですしUSBケーブルを外すとノイズが消えるのでおそらく実用上は問題ないのでしょうが、一応説明員さんに事象を伝えて確認とリリース版で影響のないよう必要な対応をして欲しい旨をお伝えしておきました。)
■まとめ
個人的に仕事上海外の特定ソフトウェアベンダーと交渉する場合に日本国内端末の実装上の問題でないことを証明するためにリファレンス端末が必要なので確実にGalaxy Nexusは購入はするのですが、果たしてこの端末が国内で(好評を博して)売れるかどうかというと冒頭で書いたように大きく疑問です。最新のOSを最速で求める層と仕事上必要な層を除いて、積極的に購入すべき理由があるように感じません。ICSには正直不満点の方が多いと言わざるを得ないと思っています。iOS5やWindows Phone 7.5がUIで非常に優れた実装を進めて行っているのととても対照的に感じてしまいました。Androidの魅力はその自由度にあることは否定しませんが、Google自身が制御しうるリファレンスたる部分でまでUIが統一されないのは先行きに不安感を感じざるをえません…。ICSは便利な機能は追加されているものの、OSとしてAndroidを使いやすくしてはいない、そんな印象でした。これが単なる杞憂であるならそれに越したことはないのですが、せっかく日本でリファレンス端末が初めて購入できるようになったのですから、これが今後リファレンス端末が発売されなくなる悪しき前例となってしまわないことを、心から祈りたいと思います。
【追記】テザリングについて
Galaxy Nexus自体はテザリング対応ということになっていますが、上記のレビュー機体において設定アプリ内のメニュー項目にテザリングは存在しませんでした。展示機ではテザリング設定アイコンがホーム画面を右にフリックした2番目の画面内に配置されていましたが、クリックして開いてみてもヘルプという項目があるだけで、そこではUSBテザリングとWi-Fiテザリングの説明が表示されるのみという状況で、テザリングに関する実質的な設定画面などを確認することができない状態でした。SIMフリー版でのメニュー配置がどうなるのかはわかりませんが、docomoの他機種がテザリングの際のみ通常のAPN設定と異なるテザリング用既定APNを利用する変則的な仕様になっていることを考えると、この辺りの実装をdocomo版Galaxy Nexusで独自に追加するようにしたため現在の展示機にその辺りの反映が遅れているという見方はできそうです。説明員の方もテザリングに関してなぜメニューにないのか詳しいことは開発途中のバージョンなのでわからないということでした。
【追記2】SC-04Dのテザリングがアップデート対応になった件について
11/11に公開されたgizmodo.jpの記事の通りSC-04Dのテザリング機能はリリース当初は搭載されずアップデートで提供されることになったようです。11/7に公開されているBlog of Mobile!!さんの記事では無線とネットワーク設定にテザリングの項目が表示されていることから、docomo側の要求仕様に合わせた変更の結果発売に間に合わないという判断になったことが推測されます。docomoとSamsungの間でどのようなやり取りがあったかわかりませんが、11月の頭の時点で実現されていなかった仕様を11月発売予定の製品に入れ込もうとするのは流石にどうかと思ってしまいます。度重なる海外でのGalaxy Nexusの発売延期はこの件が影響したものではないかと疑いたくなってしまいますね…。