■iPhoneとSIP/VoIP 2010/12版
 iPhone用にSkypeを脅かす存在になりそうなViberというVoIPアプリが登場し、実際使ってみてその音質の良さに少し驚いた。遅延は少し感じるものの3Gでの通話品質の高さと、iPhoneのコンタクトとの親和性の高さ(コンタクトの登録者がViberユーザならアイコンが表示されViberで通話する)はとても素晴らしいと思う。アプリをインストールしてSMS経由でパスコードを受取り認証を行うだけの簡単な手続きもよい。機能的には現時点で音声のみ、iPhoneユーザのみが対象(Andorid版は来年1Q予定)とは言え、今後の発展がとても楽しみなアプリである。

 SkypeはauがAndroid端末の標準機能として組み込み、3G通話との融合でパケットの不安定さを排除し通話の安定性や品質の向上を図る一方で、期間限定とはいえ日本国内で他社のAndroid端末がSkypeを簡単にインストールできなくする制限をかけるなど、キャリアの戦略を左右するところまで成長している。iPhoneではこの規制の影響を受けることなくSkypeを利用可能なので大きな問題はないのだが、プラットホームに依存しなくてすむはずのSkypeがこうした排他的戦略を受容することはやや残念に感じる。auの3G通話融合はバックボーンのIP化やSkype Connectなど多くの技術的背景に支えられたものだと推測するが、戦略的に判断が難しいことは承知の上で、ぜひ他キャリアも実施してもらいたいと思う。

 ということで、前置きがちょっと長くなったがAndroidのSIP記事同様、iPhoneをひかり電話の子機として接続する試験をしてみる。以前試した時よりも選択肢が非常に増えており、実際試し切れないので手元にあるもの&日本語対応のものを中心に試験してみた。環境は以下の記事と同様なので参照してほしい。

 AndroidとSIP/VoIP 2010/12版
 http://blog.isnext.net/issy/archives/556

 iPhoneでの電話経路は WiFi接続でiPhone 3GS →CommuniGate Pro →RV-230SE →ひかり電話網 →WillcomPHS電話。iOSのバージョンは最新の4.2.1となっている。

 ・Acrobit SoftPhone 4.5 ◎ 通話可能 遅延ほぼなし
 ・Linphone 1.0.3 ◎ 通話可能 遅延ほぼなし
 ・AGEphone 1.1 ◎ 通話可能 遅延ほぼなし SIPポート5060に変更
 ・iSip 4.7.1 ○ 通話可能 遅延ほぼなし CodecをG711(uLaw)指定必須
 ・Media5Phone Pro 2.6.1.0 ○ 通話可能 遅延ほぼなし G711 uLaw以外無効に設定
 ・Whistle Phone 1.23 ○ 通話可能 遅延少し
 ・Nimbuzz 2.0.2 × コールするものの音声通話できず
 ・fring 3.3.1.9 × コールするものの音声通話できず

 今回はほぼ全てのアプリでコールが可能で、2つを除いては通話も問題なくできた。上記のうち有償ソフトはAcrobit SoftPhone, iSip, Media5Phoneの3つ。後者2つはCodecを明示的にG711uLawに限定しないと通話できなかったことから、子機運用のみでは利用可能だが外部持ち出し時に3G接続では通話品質に難が出る可能性がある。LinphoneとAGEphoneは無償かつ安定感もあるのでオススメできる。

 AGEphoneは国産ということもあり、2つのSIPアカウントのうちひとつをIP電話Cなど050番号のIP電話に設定可能と思われる(WM版のAGEphoneは可能だった&NiftyフォンCへの接続事例がストアコメントにある)ので、使い勝手の面で一番良い選択肢になるかもしれない。国内のIP電話サービスにはなかなかレジスト可能なIP電話ソフトがないため、AGEphoneがiPhoneに移植されたことは、無償であることと合わせて非常に嬉しいことだと思う。

 今回はひかり電話経由の発信のみ確認したが、iPhoneの場合着信も要確認と思われるので、日を改めて確認をしようと思う。Viberの登場でVoIPがまた注目されそうなので、久しぶりにSIPの検証をやりたくなった。今後も面白そうなものがあれば試していきたい。今回SIPアプリを探す過程で国内でもAgeetがAndroid/iPhone用にBlueSIPというアプリを開発したという記事を知ったのだが、現時点ではリリースされていないらしくAndroidマーケットでもiTunes Storeでも見つけられなかった。CommuniGate Proなど比較的簡単に無償導入できるSIPサーバがあり、昔に比べるとネットワークの帯域や安定性も向上している状況なので、ぜひ国内でももっとSIPが見直されることを期待したい。

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■AndroidとSIP/VoIP 2010/12版
 iPhoneにViberが登場しVoIP周りがまた面白くなってきそうなので、Android版のViber登場を待つ前にSIP記事の更新をしておこうと思い立った。前回の記事は2010年6月ごろなので約半年ぶりの更新になる。

 AndroidとSIP/VoIP
 http://blog.isnext.net/issy/archives/292

 Android用のSIPクライアントの数もそれなりになってきており、古くからのアプリもいろいろと更新がされているようなので、前回の記事同様ひかり電話の子機として自宅環境での実験をしてみる。自宅環境は前回の記事と同じく以下の通り。違っているとするとCommuniGate Proのバージョンが最新の5.3.10になり、SIPゲートウェイ登録から個人アカウントのRSIP登録に修正されている点くらい。

現在自宅はNTTのひかり電話になっていて、CommuniGate ProのSIPサーバ機能とRSIP(リモートSIP)機能を利用してCommuniGate Proサーバ自体をひかり電話の子機としてRV-230SEにレジスト、iPhoneやデスクトップマシンからCommuniGate Proサーバに自アカウントでSIPレジストして電話を発着信できるようにしています。

 発信試験経路も前回と同じ。違っているのはNexusOneのOSが2.2.1になっているというところか。ひかり電話のファームも変更がないので、変わらずサポートしているCodecはG.711 μ-Law (PCMU)のみということに。SIPクライアントのCodecがこれをサポートしていないと電話はできない。

電話経路は WiFi接続でNexus One →CommuniGate Pro →RV-230SE →ひかり電話網 →WillcomPHS電話

という上記条件で発信して通話を試みた結果は以下。

・LinPhone 1.0.16 ○ 通話可能 遅延少ない
・CSipSimple 0.00-15 ○ 通話可能 遅延少ない
・3CXPhone 1.2.3 ○ 通話可能 遅延少ない
・Sipdroid 2.0.1bata × 通話できず PCMU対応だがエラーになる
・fring 2.2.0.7 × コールはできるが音声聴こえず
・Nimbuzz 2.0.1 × Android版はSIP未対応らしい
・aSIP アプリ見つからず
・SipAgent アプリ見つからず

 LinPhoneは相変わらず安定して接続も通話もOK。CSipSimpleが現在のバージョンでは通話可能に。安定しているしUI的にも使いやすい。3CXPhone今回初試験だったが無事通話可能。SipdroidはPCMU対応のはずだが、コーデックの設定をPCMUのみにしても通話どころかコールすらできず。fringは前回通話できたが今回コールはしても着信側が電話に出ても呼び出し続け通話することができなかった。後の3つは試験できず。

 現時点でダイアル発信とsipアドレス発信がUI的に簡単に切替できてわかりやすいCSipSimpleはオススメできるかもしれない。長時間の通話テストや3Gでのテストはやっていないので、その辺も今後試してみたいと思う。

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